韓国語の敬語とは?존댓말と높임말の違いをわかりやすく解説
なぜ迷う?韓国語の敬語の入り口
韓国ドラマを見ていると、登場人物たちが実に様々な言葉遣いで話していることに気づきます。「~です、ます」のような丁寧な言葉もあれば、親しい友人同士で使うくだけた言葉、そして相手を深く敬うようなかしこまった表現。この多彩な言葉遣いこそ、韓国語の大きな特徴であり、多くの学習者が「難しいけれど面白い」と感じる部分です。
特に、日本語と同じように敬語文化が根付いている韓国では、その使い分けが人間関係をスムーズにする上で非常に重要になります。 しかし、いざ学ぼうとすると존댓말(チョンデンマル)と높임말(ノッピンマル)という、よく似た2つの言葉が登場し、混乱してしまう方も少なくありません。「どちらも『敬語』という意味じゃないの?」「一体、何がどう違うの?」――これは、誰もが一度は通る道です。
多くの方が悩むこのポイントですが、ご安心ください。実はこの2つの言葉の関係性は、大きな「家」とその中にある特別な「貴賓室」をイメージすると、驚くほどシンプルに理解できるのです。
このセクションを読み終える頃には、あなたは韓国語の敬語に対するモヤモヤが晴れ、自信を持って言葉を選べるようになっているでしょう。
まずは全体像から!敬語という大きな「家」(존댓말)を理解する
まず、韓国語の敬語の世界を理解するために、大きな「家」を想像してください。この家全体が「존댓말(尊待詞)」です。 この言葉は、文字通り「相手を尊び、待遇する言葉」という意味で、友人や年下に使う「반말(パンマル/タメ口)」以外の、聞き手に対して丁寧さを示す言葉すべてを指す、非常に広い概念です。
つまり、あなたが韓国語学習の初期に習う「-요(ヨ)」で終わるヘヨ体や、「-ㅂ니다/습니다(ムニダ/スムニダ)」で終わるハムニダ体も、すべてこの존댓말という大きな家の中に含まれる「部屋」の一つなのです。
- ヘヨ体(-요):日常会話で最もよく使われる、親しみを込めた丁寧な表現。「普通の部屋」
- ハムニダ体(-ㅂ니다/습니다):ニュースやビジネスの場などで使われる、よりフォーマルでかしこまった表現。「応接室」
このように、존댓말は「誰かを特別に高める」というよりは、「聞き手に対して失礼がないように、一定の距離感を保つ」ための基本的なマナーと考えると分かりやすいでしょう。初対面の人や、自分より明らかに目上の人に対して話すときは、まずこの존댓말という「家」に入ることが社会的なルールとなっています。
ポイントは、존댓말はあくまで「聞き手(あなた)」への配慮が基本である、ということです。この家のドアを開けること自体が、相手への敬意の第一歩となるのです。
家の中の特別な「貴賓室」─ 높임말の正体
さて、존댓말という大きな「家」の全体像が見えたところで、次はその中にある特別な部屋、「높임말(高める言葉)」を見ていきましょう。높임말は、その名の通り「(誰かを)高くする言葉」、つまり日本語の「尊敬語」に非常に近い概念です。
존댓말が「聞き手」全般に対する丁寧さの表現だったのに対し、높임말はもっとターゲットが限定的です。これは、会話に登場する「話題の主」が、話し手や聞き手よりも目上である場合に、その人物を直接的に高めるために使われる特別な言葉なのです。これが「貴賓室」という比喩の意味するところです。
つまり、높임말は존댓말という家の一部であり、より限定的で、より強い敬意を表すための特別な言葉群だと言えます。 例えば、以下のような要素が높임말の代表例です。
- 尊敬を表す助詞:「~が」を「-께서(ッケソ)」、「~に」を「-께(ッケ)」と言う。
- 尊敬を表す接辞:動詞や形容詞の語幹に「-(으)시-(ウシ/シ)」を挿入する。(例:가다 行く → 가시다 行かれる)
- 特別な尊敬語彙:単語自体が尊敬の意味を持つもの。(例:먹다 食べる → 드시다 召し上がる、자다 寝る → 주무시다 お休みになる)
この2つの言葉の決定的な違いを、以下の表にまとめました。この表こそが、あなたの長年の疑問を解消する鍵となります。
比較項目 | 존댓말 (Jondaetmal) | 높임말 (Nopimmal) |
---|---|---|
コンセプト | 聞き手への配慮を示す、丁寧な言葉全般 | 話題の主を直接的に高める、特別な尊敬表現 |
言葉の範囲 | 広義の敬語(높임말を含む大きな枠組み) | 狭義の敬語(존댓말の中の特定の尊敬表現) |
敬意の対象 | 聞き手(あなた) | 話題の主(社長、先生、お父さんなど) |
主な要素 | 丁寧な語尾(ヘヨ体、ハムニダ体など) | 尊敬の接辞「-시-」、特別な尊敬語彙(드시다など) |
日本語の感覚 | 丁寧語(~です、ます)に近い感覚 | 尊敬語(~なさる、いらっしゃる)そのもの |
もし使わなかったら? | 失礼・無礼に聞こえる(タメ口になる) | 尊敬の度合いは下がるが、必ずしも無礼ではない(状況による) |
実践編:「聞き手」と「話題の主」を同時に高める技術
さて、「家(존댓말)」と「貴賓室(높임말)」の違いは明確になりましたね。ここからは、実際の会話でこれらがどのように組み合わさって使われるのかを見ていきましょう。ネイティブがごく自然に行っているのは、この2つの敬語を重ねて使うことです。
判断基準は常に一つです。「今、誰に対して敬意を払う必要があるか?」これだけを考えれば、もう迷うことはありません。
ケース1:높임말を使わない존댓말(聞き手への配慮のみ)
これは、話題の主を高める必要がない、あるいは話題の主が自分や聞き手より目下の場合です。聞き手への丁寧さ(家のドアを開ける)は保ちつつ、特別な尊敬表現(貴賓室にご案内する)は使いません。
例:後輩について、先輩に話すとき
「후배가 지금 왔어요.」(フベガ チグム ワッソヨ/後輩が今、来ました。)
- 왔어요(来ました):語尾が「-요」なので、聞き手である先輩への配慮(존댓말)は示されています。
- 話題の主である「後輩」は高める対象ではないので、尊敬の「-시-」を入れた「오셨어요(オショッソヨ)」のような높임말は使いません。
ケース2:높임말と존댓말を同時に使う(話題の主と聞き手の両方への配慮)
これが、韓国語の敬語の真骨頂です。会話に登場する「話題の主」と、目の前にいる「聞き手」の両方が敬意を払うべき対象である場合、両方の敬語を重ねて使います。
例:社長のスケジュールについて、部長に話すとき
「사장님께서 내일 오십니다.」(サジャンニムッケソ ネイル オシムニダ/社長が明日、いらっしゃいます。)
- -께서(~が):話題の主である「社長」を高める높임말。
- 오십니다(いらっしゃいます):動詞「오다(来る)」に尊敬の「-시-」が入り(높임말)、さらに聞き手である部長にかしこまった丁寧語「-ㅂ니다」で締めくくっています(존댓말)。
この感覚を掴めば、あなたの韓国語は一気に洗練され、より自然に響くようになります。これにより、ビジネスメールでも、ファンミーティングでの会話でも、自信を持って言葉を選べるようになるでしょう。

韓国語敬語の使い分け完全マスター!場面別・相手別の丁寧表現
韓国語の敬語は複雑ですか?「いつ、誰に、どのレベルの敬語を使えばいいの?」という悩みを、このインタラクティブなナビゲーターで解決しましょう。ネイティブが無意識に使う「判断基準」を身につけ、あなたの韓国語を「相手の心に響く、スマートな韓国語」へと進化させます。
あなたの現在地はどこ?敬語の使い分けを決める「2つの座標軸」
上の選択肢を選ぶと、下の表で最適な表現がハイライトされます。
【結論】この一枚で完璧!関係性×場面別 敬意レベル・マトリクス
相手(関係性) | 場面(フォーマル度) | ||
---|---|---|---|
プライベート (家、友人との集まり) |
セミフォーマル (職場、学校、店) |
フォーマル (会議、面接、公の場) |
|
① 家族、恋人 | パンマル (タメ口)例: “밥 먹었어?” (ご飯食べた?) | ヘヨ体例: “식사하셨어요?” (お食事されましたか?) | ヘヨ体 or ハムニダ体例: “아버님, 항상 건강하세요.” (お父様、いつもお元気で) |
② 親しい友人、後輩 | パンマル (タメ口)例: “주말에 뭐 해?” (週末、何するの?) | ヘヨ体例: “선배님, 이거 어때요?” (先輩、これどうですか?) | ヘヨ体 or ハムニダ体例: “결혼 진심으로 축하해요.” (結婚、心からおめでとう) |
③ 学校や会社の先輩 | ヘヨ体例: “선배, 어제 잘 들어갔어요?” (先輩、昨日無事帰れました?) | ヘヨ体例: “이 서류 검토해 주실 수 있어요?” (この書類、検討していただけますか?) | ハムニダ体例: “발표 준비는 제가 책임지겠습니다.” (発表の準備は私が責任を負います) |
④ 上司、教授、恩師 | ヘヨ体 + 尊敬語例: “교수님, 식사하셨어요?” (教授、お食事なさいましたか?) | ヘヨ体 or ハムニダ体 + 尊敬語例: “부장님, 이메일 확인하셨어요?” (部長、メール確認されましたか?) | ハムニダ体 + 尊敬語例: “부장님께서 말씀하신 대로 진행하겠습니다.” (部長がおっしゃった通りに進めます) |
⑤ 店員、タクシー運転手、初対面の人 | ヘヨ体例: “혹시, 시청역 어떻게 가요?” (すみません、市庁駅はどう行きますか?) | ヘヨ体例: “아이스 아메리카노 한 잔 주세요.” (アイスアメリカーノを一杯ください) | ハムニダ体例: “질문 있습니다.” (質問があります) |
ダイヤルを微調整する上級テクニック
基本的にはハムニダ体を使うべきフォーマルな相手(例:上司)であっても、会議室を一歩出た後の雑談など、少しプライベートな空気になった瞬間に、あえて柔らかい「ヘヨ体」を混ぜてみましょう。例えば、「오늘 발표 정말 좋았어요! (今日のプレゼン、本当に良かったですよ!)」のようにです。これにより、ただ堅いだけの関係ではなく、人間的な親しみや尊敬の念を伝えることができ、相手との距離を効果的に縮めることができます。これは、使いこなせれば非常に強力なテクニックですが、相手との関係性を慎重に見極める必要があります。
韓国社会で特に難しいのが、自分より年下だけれども、役職は上(例:年下の上司)というケースです。この場合、基本的には「役職」を優先し、丁寧語(존댓말)を使うのが絶対的なルールです。たとえ相手が年下であっても、公の場では「김 대리님 (キム代理)」のように役職名をつけて呼び、ヘヨ体やハムニダ体を使います。プライベートな場でどれだけ打ち解けるかは相手の性格にもよりますが、最初のうちは徹底して敬語を使い、相手の出方を見るのが最も安全な方法です。

韓国語敬語の例文集まとめ|自然で失礼にならない言い回し一覧
単なる暗記から、「自在に敬語を生成する思考回路」のインストールへ。このインタラクティブなガイドで、あなたの韓国語を次のレベルへと引き上げましょう。3つのステップで、相手への敬意が自然に伝わる表現をマスターできます。
これだけは絶対に覚えるべき!尊敬語の特別単語リスト
계시다 (ケシダ)
(社長は事務所にいらっしゃいます)
드시다 / 잡수시다
(おばあさん、お昼召し上がりましたか?)
드시다 (トゥシダ)
(温かいコーヒーを一杯いかがですか?)
주무시다 (チュムシダ)
(父はもうお休みになっています)
말씀하시다
(先生が重要だとおっしゃいました)
드리다 (トゥリダ)
(私がこの書類を部長に差し上げます)
돌아가시다
(私の祖父は昨年、亡くなりました)
댁 (テク)
(教授のお宅はどちらですか?)
성함 (ソンハム)
(お名前は何とおっしゃいますか?)
연세 (ヨンセ)
(おばあ様はご高齢です)
【シーン別】3段階活用でマスターする敬語変換テーブル
도와줘서 고마워.
(手伝ってくれてありがとう。)
도와주셔서 감사해요.
(手伝ってくださってありがとうございます。)
도와주셔서 진심으로 감사드립니다.
(お力添えいただき、心より感謝申し上げます。)
이것 좀 알려줘.
(これ、ちょっと教えて。)
이것 좀 알려주실 수 있어요?
(これを少し教えていただけますか?)
이것에 대해 알려주실 수 있으십니까?
(こちらについてご教示いただけますでしょうか?)
늦어서 미안해.
(遅れてごめん。)
늦어서 죄송해요.
(遅れてしまい申し訳ありません。)
늦어서 대단히 죄송합니다.
(遅れましたこと、大変申し訳ございません。)
이거 뭐야?
(これ、何?)
이건 뭐예요?
(これは何ですか?)
이것은 무엇입니까?
(こちらは何でございますか?)
上級者への道:敬意をさらに深める「潤滑油」表現
初対面の人に何かを尋ねたり、話しかけたりする際に最も一般的に使われるクッション言葉です。
相手に何か面倒なことや、負担になることをお願いする際に使います。「申し訳ない」という気持ちを先に伝えることで、お願い事のハードルを下げ、丁寧な印象を与えます。
断られる可能性を考慮しつつ、控えめに何かを提案したり、確認したりする際に非常に便利な言葉です。相手にプレッシャーを与えず、柔らかい響きで尋ねることができます。
相手の都合や意向を最優先に尊重するニュアンスを伝えたいときに使います。相手に選択の余地を与え、配慮の深さを示すことができる、非常に丁寧な表現です。
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